Ragnarok〜青空の下で〜5話
祐々は血で真っ赤に染まった服を全部脱がせ、傷口を調べる。
「?!……これは…ひ、酷い」
肩口がぱっくりと穴があきピンク色の肉の間から白いモノが覗いていた。
また、太腿の方の傷も深く、怪我した場所が付け根に近く、右太腿の肉をかなり抉り取られていた。
幸い骨には異常はないが、血管に損傷を与えたのだろう、いまだ血が流れてる。
放っておけば死は確定なほど状態は悪かった。
「と、とりあえず止血をしないと・・・・」
自分のスカートに予備武器のダガーで切れ目を入れ、肩口の怪我を避け、血管を圧迫するように止血を施す。
同様に太腿の付け根を裂いた布で強く縛り止血を施す。
「取りあえずは止血をしたけど、このままでは運べないわ」
近くに転がってるノエルのザックを引き寄せ、中身をひっくり返す。
「赤ハーブ20枚、緑ハーブ6枚、食料の南瓜の煮物10パック、黄ポーション1つ。その他は……ゼロピー200個、ベト液22、綿毛4…大したものはないわね」
近くの湧き水から汲んで来た水で傷口を洗う。
愚痴を言いながら今度は自分のザックから小さな皿を取り出す。
「私のほうが何もない……」
ちらっとザックからこぼれている大量のニンジンを尻目に、赤ハーブをすり始める。
「こんなことなら白ポーション、ケチらないで買って置けばよかった」
そして、黄色ポーションとすり潰した赤ハーブと緑ハーブを混ぜて、真新しい布に染み込ませ傷を押さえる。
「応急処置は済んだけど、急いで帰らないと……」
祐々は早々にノエルと自分の荷物を纏め、マントにノエルを両手で抱き上げる。
そして、あらかじめに用意してあったポケットから蝶の羽を取り出し、空に高く投げる。
同時に羽に込められていた魔力が開放され、ノエルを抱いた祐々を閃光が包み込みその場から姿を消した。
プロンテラの街に辿り着いた時はすでに日が落ち、空に星が輝き出していた。
祐々はそんなことはお構いなしに、その足で急いで大聖堂に向かう。
「あゆあゆ、いる?」
扉を乱暴に蹴り飛ばし、大声で知り会いのアコライトの名を叫ぶ。
「うぐぅ……祐々さん。そんなに怒鳴らなくても聞こえるよ〜」
ひょこっと奥に続く扉から顔を出したのは、綺麗な金髪を肩口で揃えた年齢12〜3歳の幼いアコライトだった。
「あれ?ノエル?」
マントに包まれて祐々に抱かれてるノエルを見て首を傾げるあゆあゆ。
「あゆあゆ、ティファさん居る?」
「うん、奥の部屋でフェイヨンに行く準備をしているよ」
「よかった、間に合った」
つかつかと祐々は奥の部屋に向かおうとする。
「え?だ、ダメだよ。ティファさんは出発の準備で忙しいんだよ」
あゆあゆの制止の言葉を聞かずに、奥の部屋に入る。
「ティファさん、助けてください」
「あら?祐々ちゃん、どうしたの?」
ノエルによく似た顔立ちの長い栗色の髪のプリ-ストが部屋に入ってきた祐々を見て微笑む。
前にノエルがお母さんと言っていた女性である。
でもノエルを産んだにしては20代見えるのは何故であろうか?
まあ、聴いても秘密と答えそうだが……
「申し訳ありませんでした。信頼してくれていたのに、私はノエルを護りきれずに大怪我をさせてしまいました」
悔しそうに深々と頭を下げる祐々。
「……そんなことよりもさっさとこちらにノエルを運んで……後で事は聞くわ」
ティファは祐々を攻めることはせずに部屋を出て、廊下を早足で歩く。
「はい」
それに続く祐々。
「ここよ」
ティファは一つの扉を開け、中に入る。
それに続いて祐々もノエルを抱え、扉をくぐる。
そこは医療室みないな部屋だった。
白いシーツがかけられた簡易ベッドが何台か置かれてる。
「そこに寝かせて、そして服を全部脱がして…」
テキパキと祐々に指示を出すティファ。
祐々はノエルをベッドの上に寝かせると、包んでいたマントを取り除く。
一方、ティファはポケットから青い燐光を放つ鉱石……ブルージェムストーンを2つ取り出す。
「流石は冒険者ね。止血や応急処置が的確にされているわ」
ティファは手馴れた様子でペリペリと傷口に当てられた血に汚れた布を取り除く。
「これはまた、派手にやられたわね。マンドラゴラね?」
「はい」
ティファは石を握り締める。
「大いなる父よ。偉大なる聖霊よ。親愛なる子よ。我はここに祈りを捧げます。大いなる御手と聖なる光にて、迷える子らを救いたまえ……聖域(サンクチュアリ)」
パキンッ
ティファの手にある石が砕け散ると共に……
ザアアアアァー
清らかな風の音と共に……ノエルの寝ているベッドを中心に暖かい薄緑色の光を放つ空間が辺りを満たす。
その光の中でノエルの大きく開いた傷がまるでビデオの逆戻しを見ている如く、再生され癒されていく。
光の空間の中にいた祐々自身の身体の痛みが消え、先ほどのマンドラゴラで受けた傷も跡形もなく消えてしまった。
光が止むと穴の空いた肩も抉られた太腿も何も無かったかのようにノエルが寝ている。
血の気の無かった身体も薄っすらとピンクがかり、生きていることを感じさせる。
「よかった……」
ほっと胸を撫で下ろす祐々に
「まだよ。傷は癒えたかもしれないけど、失った分の生命力を注ぎ込みます」
「ぇ?生きているんじゃ……」
「ええ、とりあえずは肉体は生きているわ。でもいまの低下しきったノエルの生命力では動ける状態じゃないの」
どこかから取り出したブルージェムストーンを取り出すと……
「大いなる父と聖霊と子よ。我が祈りを聞き届け、奇跡を起したまえ…リザレクション」
祈りが届いたのか一人の天使が降りてくると同時にもっている杖を振るう。
天使の杖からほとばしる光がノエルの胸に吸い込まれ消える。
ドクンッ
一瞬、ベッドの上で仰け反る。
「さてと終ったわ。あとはよろしくね祐々ちゃん」
ぽんっと肩を叩くとティファは扉を勢いよく引く。
ドテッ……
「う、うぐぅ……」
「あゆあゆちゃん、覗きはダメよ?」
「うぐぅ…ごめんなさい」
シュンっと頭を垂れるあゆあゆ。
私はこれからすぐにフェイヨンに戻らないといけないから……祐々、あゆあゆ、ノエルの世話をよろしくね? しばらくは動けないと思うから」
「う、うん。ボク、頑張るよ」
「任せたわよ」
そう言い残すとティファは部屋を出て行ってしまった。
後書き?作者「ふぅ、5話です」
ティファレト(以後ティファ)「作者さん♪」
作者「お!これはノエルのお母さん」
ごすっ
作者「ぐあ、いきなりタブレットで叩かないで下さい…………」
ごすっ
作者「がはっ……痛いです」
ティファ「ノエルをこんな目にあわせて、罪を悔い改めなさい」
作者「…………はい」
ティファ「よろしい♪でも次にやったらどうなるか判ってますね♪」
作者「えぅ……わかりました」
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