Ragnarok〜青空の下で〜3話
「クフフッ〜」
「うひぃ……」
必死な表情で逃げるノエルを追い掛け回す祐々。
体力がないノエルは数分も立たないうちにすぐに息が上がってきて祐々に追いつかれてしまった。
「つ〜かまえた♪」
ガシッと背後からノエルに抱きつく祐々。
「はぁはぁ…はぁ………ああ〜……神よ〜」
抱きしめられたノエルの表情に絶望の溜息が吐き出される。
「ノエル〜♪」
祐々の声に怯えてきゅっと身体を縮こませて、次の攻撃に耐えようとする。
まるでその姿は蜘蛛の巣に掛かった無力な蝶のようだった。
「……さて冗談はココまでにして……」
いきなり素に戻り、ノエルから離れる祐々。
「はぁはぁ…はぁ……ほ、ほん……と…うです…か……けほけほ…はぁはぁ…」
体力がまったくないために息切れしながら、少し離れた木の陰から頭だけを出して怯える様に問うノエル。
「本当よ。こんな危ないところでするもんですか。するなら宿屋で朝までじっくりと……じゅる」
最後の方の台詞はノエルに聞こえないように呟く。
「よ、よかったああ〜」
危機が去ったノエルは思わず脱力してその場にペタンと腰を下ろしてしまった。
「神よ、生きていることに感謝します」
「あ、あのねぇ……」
その後に聖職者らしいノエルの感謝の言葉に思わずこめかみがひくひくと動く祐々。
「でもノエルは本当に体力ないわね」
へたり込んで動けないノエルの横にちょこんと腰を降ろす祐々。
「そんな事言っても……剣士の祐々さんに勝てるわけないですよ」
「それを抜きにしても体力なさ過ぎだわ」
「そうかな〜」
「そうよ……このお使いが終わったら、この私が直々に鍛えてあげるわ」
「むぅ……」
眉間に皺を寄せてしかめ面するノエルに構わず、さっさと決めてしまうのであった。
「ほら、そんなしかめっ面しないでさっさと用事を終わらすわよ」
すくっと立ち上がってスカートに付いた草をパンパンと叩き落す。
「……そうだね。いつまでもここに居るといつマンドラゴラに襲われるかもしれないし…」
ノエルが立ち上がろうしたその時……
「えっ?」
シュルル
子供の腕ほどの太さがある内臓の様な薄黒いピンク色した蔦がノエルの足首に絡みついた。
「きゃあああ」
蔦はかなり強い力で抵抗する間もなくノエルは地面に引き摺り倒されてしまう。
倒れたノエルを捕獲するように集まってくる無数の蔦。
シュルルっと幾本もの蔦が次々とノエルの手足や体に巻き、抵抗するノエルから瞬く間に自由を奪っていく。
ズ、ズズッ……
徐々に拘束されたノエルの体は本体のあると思われる茂み方へと引き摺られていく。
「い、いやあああ〜」
「ノエル!!」
ノエルの悲鳴を聞きつけ祐々は鞘から一気に愛用の両手剣を抜き放ちながら駆け寄るが……
「わ、私は全てを神に捧げてる身なんで、出来れば触手好きな祐々さんに……」
蔦に絡め取られ、身動きできない状態でも一言、言わないと済まないノエル。
「…………余裕ありそうね、ノ・エ・ル?」
「う、嘘です。祐々さん。ごめんなさい、助けてください」
「……祐々お姉さま」
「…………
ツーッと視線をあさって方向に向けるノエル。
「どうしたの?ノエル?」
「いえなんでもないです」
「早くしないと消化されちゃうわよ?」
「う、うう………祐々お姉さま、助けてください」
「はい、よく出来ました!!」
ザンッ
祐々は軽々と両手剣を振りまわし、ノエルを拘束していた大半の蔦を易々と切り裂いていく。
そのまま、剣を水平に構えたまま、茂みの奥に隠れていた不気味な樽の様な植物………マンドラゴラの本体に向かっていく。
「はあああああああ………バッシュ!!」
ゴウンッ
突如、祐々の気合いの声と共に輝きだした白刃が植物に触れたと同時に爆発を起こす。
熟練した剣士のみが使える必殺技の一つ【バッシュ】
……自らの気を剣に送り込んで一瞬だけ爆発的な攻撃力を生む大技である。
熟練すれば熟練するほど威力が高いのである。
「大丈夫?ノエル?」
ノエルにまだ絡みつく蔦を力任せに引きちぎり、救出する。
「う、うん……大丈夫だと思う。少し、体がピリピリしてあまり動けないけど……しばらくすると動けると思うから…」
ぐったりと力なく地面に横たわるノエル。
マンドラゴラの樹液を身体に浴びたことによって、麻痺させられているようだ。
「それにしても……色っぽい姿よね〜」
「え?……」
樹液に濡れて身体に張り付き身体のラインが強調されてしまった法衣と、捲くれ上がったスカートから日焼けしてない白い太腿が見えていた。
「フフフ……」
ジリジリっと寄って来る祐々。
「ちょ、ちょっと。祐々さん」
身体が痺れて満足に動けないノエルは、法衣が汚れるのも気にせずかろうじて動く手だけで芋虫の様に這って祐々から逃げようとする。
「!!!……ノエル!!!」
ノエルが祐々が襲っ来たので思わず目を瞑った瞬間、突如強い衝撃を身体に受け、突き飛ばされる感覚が襲った。
数回、地面をリバウンドし木に激突して止まる。
「ぐぅ……げほっ」
その上、息がつまり、昼に食べたもの逆流してくるのを無理矢理、両手で押さえる。
それが収まると今度は、体中にじわりと滲み出るように痛みが走り、口の中にじわりと血の味が広がって来た。
すでに法衣はどろどろに汚れており、ノエルの顔や手など皮膚がところどころ切れて血が滲んでいた。
「祐々さん……いきなり……なに…………を……」
痛む身体を起して、祐々に非難を言おうとした瞬間、その光景を見て思わず言葉が止ったしまったのだった。
「祐々さん!!!」
「ノエル………早く…逃げて…………」
後書き?作者「ふぅ、一段落終った」
ノエル「………」
作者「ノエル、なんだ?メイスを振り上げて……」
ノエル「神よ。この者に罰を与えたまえ……アーメン」
それと同時に振り降ろされるメイス。
作者「お、おい、そ、それは……ぎゃあああああああ」
ゴシュ、ガス、ドス、バキ……(小一時間)
ノエル「ふぅ…………汝が罪を悔い改めよ」
真っ赤に染まったメイスを手に去っていくノエル。
作者「だ、誰かヒールプリーズ……」
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